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着物の四季~季節にあった装い~【着物の着分けルールとは】

着物の四季~季節にあった装い~【着物の着分けルールとは】

2021年06月27日

◆着物は四季を楽しむ文化

6月も終わりに近づいて既に夏服で過ごされている方がほとんどかと思います。
以前ほど厳密に「衣替え」をする事も無くなりましたが
洋服だけでなく着物にも「衣替え」の習慣があります。

本来衣替えとは単に衣類を入れ替えるだけではなく衣類の季節感を養ったり、手入れや管理、
整理整頓の仕方を身に付け「物を大切に長く使う心」を受け継ぐ意味も兼ね備えています。

四季それぞれの着物の良さを知って、より素敵なコーディネートでお出掛けしてみて下さい。

◆季節ごとの着物のルール

衣替えは平安時代に中国から伝わったとされその後日本において幾度となく変化し現代では下記のようになりました。

  10月1日    ~ 5月31日  袷(あわせ)
    6月1日    ~ 6月30日  単衣(ひとえ)
    7月1日    ~ 8月31日  薄物(うすもの)
    9月1日    ~ 9月30日  単衣(ひとえ)

10月から5月に着る「袷:あわせ」

袷(あわせ)は生地の痛みなどを防ぐ役割を持つ裏地を付けて仕立てられています。
勿論裏地がある事で暖かく着られますが、
それだけではなくこの裏地は歩いた時にちらりと見える事があり着こなしに遊び心を出すこともできます。
チラリとしか見えない部分ですが、こういう所にこだわる事で着こなしの印象も変わり
おしゃれ感アップ間違いなしです。
また袷は重量感があって写真映えするため、オールシーズン着用する方もいるようです。

6月と9月に着る「単衣:ひとえ」

単衣は裏地のついていない着物で、6月と9月の季節の変わり目に用いられます。
裏地が付いていないだけで生地に透け感は無く、
暑くもなく寒くもない季節の変わり目に着用するのにぴったりです。
一般的に6・9月に用いられますが、暑い日や寒い日がつづくような場合には、早めにその季節に適した着物を身につけて問題無いため、その年の気候によって着用される期間には違いが出てきます。
同じ単衣の着物でも季節の先取りとして帯や小物は6月には夏用を、9月には冬用を着用して違いを出します。

7月から8月に着る「薄物:うすもの」

夏の暑い時期には、糸の密度を粗くして風通しをよくした透け感のある紗や絽と呼ばれる布地で仕立てられた盛夏用の薄物もしくは夏物を着用します。
紗はからみ織で織られた生地の事をいい、絽は平織とからみ織を組み合わせて織った物で、正装にも使われます。

◆衣替えは着物だけではない?!

帯は大きく分けると2つの時期別に分類される

帯は大きく分けると2つの時期別に分類されます。

夏帯は6月から9月の残暑の期間を目安に身につける帯です。
単衣や薄物・夏物の着物に合わせるもので、袷と組み合わせることはほとんどありません。
見分け方は、独特の透け感でパッと見てその涼しげな印象から夏帯と判別することができます。
紗や絽、羅などは着物と同様に透け感のある織りの生地で作られているため軽く、通気性にも優れています。
素材としては麻を使用していることが多いです。
デザインも軽やかな印象のものが多く、薄物・夏物と夏帯のコーディネートは夏ならではの涼しげな装いとなるので、着こなしを考えるのもより一層楽しみになります。

冬帯と言われる夏以外の3シーズンで利用される帯は、透け感が無いのが夏帯との違いです。
1年のうち半年以上用いられる帯であるため、
染めや織りなど様々なものがあり気候に応じてより適したものを選ぶことが必要です。
一般的には「つむぎ」などの織の着物には染の帯を。反対に染の着物には織の帯を合わせる事が多いようです。

小物も季節に合ったものを。。。

着物と帯だけでなくそれに合わせて帯揚げや帯締めにも季節があります。
こちらも大きく分けて2つに分類され、夏用は透け感のある織の強い生地で出来ており透け模様があしらわれているので手に取ると違いは一目瞭然です。

他にも肌着と着物の間に着る長襦袢や、長襦袢の衿につける半衿にも夏用があり実は草履や足袋にも夏用があります。
夏物には涼しげな見た目や独特の質感があるのでぜひ実際に手に取って違いを実感してみてはいかがでしょうか。

◆それぞれの季節の装い

冬の装い袷【写真・左】

紅色よりの赤の着物にかわいらしい雪うさぎの帯を合わせると、冬の凛とした空気の中に、ほっこりとした赤がとても映えます。月を眺めるうさぎさん。まるで月に帰る夢を見ているようです。

春から初夏の装い単衣【写真・右】

新芽の芽生えを思わせる萌黄色の着物に淡い色の帯揚げ・帯締めを使い、黒い帯で少し凛々しさを出してみました。
百人一首の描かれたこの帯、上の句は文字で、下の句は絵で表現するというとても粋な帯になっています。
こんなおしゃれ心も着物の楽しみですね。

盛夏の装い薄物【写真・左】

夏の盛りにはあえて黒い着物に白い帯でシャキッとした装いを。
そこに淡いオレンジの帯揚げを、帯締めもグラデーションの入ったオレンジを持ってきて、統一感を出しながらメリハリを利かせ寂しい印象を拭っています。

秋の装い単衣【写真・右】

紅葉をあしらった紫の着物に青緑の麻の葉模様の帯をつかい、秋を意識して薄い茶色の帯揚げと金茶の帯締めを合わせてみました。
麻の葉も日本の伝統的な文様で、魔除けの意味や、子供の健やかな成長を願う意味があったりします。
最近よく見かけますが、こんな風に文様の意味を知る事も楽しみですね。

◆浴衣は着物?

夏の着物というと浴衣をイメージされる方が多いかと思いますが浴衣は元々「湯帷子(ゆかたびら)」と呼ばれ平安時代に貴族が蒸し風呂に入る時に着用されたのが始まりと言われています。
それが時代の流れとともにお風呂上がりの着衣となり、呼び方も「浴衣」に変わっていきました。
江戸時代になり庶民が銭湯に通いはじめると、風通しが良く汗を吸ってくれる浴衣を入浴後に着るように。
いまでも温泉旅館などで浴衣を着るのは、この名残といえるでしょう。
ただ近年では「湯上がり着」としてではなく、夏の街着としてすっかり定着している感があります。
それに伴い、シャリ感のある「綿紅梅(めんこうばい)」や透け感のある「綿絽(めんろ)」等の高級木綿や麻、
また綿と麻の混合生地や発色が良く色鮮やかな柄が映えるポリエステル、シルクのような質感を持ち見た目にも涼しげなレーヨン生地等、機能性が高い科学素材の物も数多く出ています。

◆自分ルールで着物を満喫!!

着物の種類も増え、衣替えができるようになると、着物を着てお出かけをするのも楽しくなります。
どの時期にどの着物を着ればいいのか迷ってしまうという方は、これらを参考に衣替えをして、季節の装いを満喫してください。
着物の種類を覚えて、更なる着物美人を目指しましょう。
ただしこれらは絶対ではありません。時代とともに季節の衣替えも変化してきました。
近頃は5月でも暑い日が多くなってきています。
それでも「今日はこの袷を」と思った時には襦袢だけでも夏物にすると袂(たもと)からチラリと見えた時に初夏が感じられます。
正解も不正解もありません。
素敵かどうか、来ている自分が楽しいか、そんな基準で気軽に着物を楽しんでいただきたいと思います。

一方で、私はこれが着たいから着る! の一点張りも見苦しく感じるときがあります。
緩やかに、でも自然と季節の決まりを意識した着こなしで
「もうそんな季節なのね」と見る人に感じてもらうのも、着物の魅力かと思います。
例えば、5月6月の単衣には、爽やか・スッキリした色や素材感の帯を、9月10月の単衣には、秋らしいテイストのもので季節の先取りをしてください。

ここまで着物の四季や種類について色々お話してきましたが、「結局どうすればいいの?」と思われた方もいらっしゃるかと思います。
それを手助けする方法の一つとして今はレンタル着物があります。まずはレンタルで様々な着物や組み合わせに挑戦してみてください。
是非、オリジナルコーディネートをレンタル着物岡本で見つけて着物をもっと身近に楽しんでください。

【この記事の著者】
レンタル着物岡本 八坂神社店
〒605-0073 京都市東山区祇園町301-1
TEL: 075-532-0510

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